=第二章・第三部= |
出発はさほど朝早くでもない…時計の針が9時を回った所だろう。 秋空ながら、未だ暖かいというよりも少し強い日差しの下、昭汰は兎萌を前にして、周囲を見回すように顔をめぐらせた。 駅前の商店街通りでも、寂しさを覚える田舎街な風景のアーケードであったのに、… これから向かうであろう場所は、田んぼと畑のあぜ道を通り、人家も疎らで、… 簡素…。質素…。素朴…。 どんな表現をしても華やかしい雰囲気はないのが、昭汰の持ったこの原線路界町のイメージだった。 「何もない町だから、この町は素敵なのよ」 |