=第二章・第六部=
=2日目=

 

「さ、着いたわ」
 そう言って、兎萌が立ち止まる。
「…」
 立ち止まった先の家を見上げ、昭汰は少し唖然とした表情で、呟いた。
「ここが…?」
「そ、"ShadowBlain"の本社よ」
 そう言われても、…彼は、ピンッとこなかった…。

  それもそうだろう。
  兎萌の家の平屋よりかはましではある、二階建ての家屋…。だが、
  もうどこにでもあるような、民家、である。

 疑り、周囲を見回すも、
 周りは田んぼと畑と、電気の中継としての電信柱と、
 町からは少し離れた、寂しい雰囲気の家でもある。

 これが、世界に名を轟かす会社の本社と言われても、納得もいくはずがない…。
「やっぱり、信じられないか」
 不平そうな面だったのだろう。昭汰の顔を見て、兎萌がケラケラと笑う。
「本社っていっても、ほぼ工場稼動をネットで管理するくらいだもの、こんなもんよ。今の時代」
 そして、表札[室戸]の下にあるインターホンを押しながら、兎萌はさらに言葉を続けた。
「それに、顧客を応対するのは、基本、都会だもの。あっちは立派なビルが建ってるわ。ここじゃ、そんなビル建てたって、田んぼの日照の邪魔でしょ」
 兎萌の言葉に、昭汰はそうだね〜、という表情を見せる。

「確かに、こんな田舎で大きなビルなんて、農業者が怒りそうだな」 


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