=第二章・第十二部=
=2日目=

 

「はは、くやしいな…」
 昭汰が小さく呟く。…

 陽も少し傾きだした。その空の下、兎萌の家に帰路を取った昭汰と兎萌。

「見透かされてる…って感じで、ああいう人だから、会社を運営できるんだね…」
「…」
 昭汰の呟きに、兎萌は少し押し黙り、それから、ぱっと、彼の前へ回り込む。
「ごめんなさい。ナウ、ああいう所があるから、…その」
「…、いいよ。本当の事だしね」
 兎萌がそう言葉に出すのに、情けなさも重なって、クスっと笑う昭汰。
「正直、ああ、ズバッと言ってくれると、助かるよ。お茶を濁すマネは、幾度となくもらったしね」
 そこまでぼやき、それから、歩き始める。
「なんで、マジックを始めたのかを…すっかり、失念してた。ってのも、ある。そうだね、うん。確かに。そうだ」
 そして、それっきり、口を閉ざす昭汰。

  「どうして、手品をやり始めたの」

 ふと、沈黙に耐えかねたのだろう。…兎萌が口を開く。
「もしよかったら、教えてほしい…なぁ」
「…」
 そんな兎萌の横顔を見て、…昭汰は苦笑をした。
「何の事はないよ…。同級生に見せた、本を見て覚えたマジックが最初さ」
 それから、前を見つめ、…言葉を漏らす。
「でもって、驚いて、興味を持つ顔に、僕は喜んでいた…。そこから、僕は、マジックを本格的にやってみようかな…、と思った」
「へえ、…」
「まあ、現実には、そんなに甘い世界でもなかったんだよね。だから、だんだん…失念したんだと思う」
 そして、兎萌を見て、微笑を漏らす昭汰。
「奈右闇君は、それを思い出させてくれた。…そうだね、自分も楽しめないで、人を楽しませれるなんて、出来ないよね」


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