=第三章・第八部=
=3日目=

 

「で、なんで、ナツまでついてくるのよ」
 奈左水に連れ立って、歩き出した昭汰の前を、先ほどのメイド姿の女性もついて歩き出した。
「マスターより、奈左水様お一人に任す訳にいかない、と仰せつかっております。不肖、ナツもご同行させていただきます」
「まったく、ナウは、…人を何だと思ってるのかしら…。それでカウンター業務はいいの?」
「今日の事務作業は片付いておりますし、これ以降の来客の予定もありません。また、現在、セキランお姉さまがこちらに向かっております。後、10分ほどで到着するものと思われます」
 そんな二人のやりとりを聞きながら、ついて歩く昭汰は周囲に視線をめぐらせた。

 秋深まっていく山々を望める窓とどこまでも続きそうな廊下。
 片田舎にも感じるこの町には、あまりにも大きな作りの学校でもある。

「改めて、思いましたけど、ずいぶん、大きな学校ですね。…この町には大きすぎないかな…」
「あら、いい所に気づいたわね。まさにその通り!」
「この学園には、この町の住民以外にも県外者を受け入れております。弊社[
ShadowBlain]の教育部門も設立されておりますので、経済学や物流学など流通に関する特別講義コースや、より質の高い教育者を育てるカリキュラムを組まれた特殊講習コース等、他多数を備えております。また、一クラスを20人前後にまとめ、少人数での教育を心がけているため、普通科を含めると、1学年に15クラスに分類されております。また、県外者のための寮もここより、徒歩30分程の場所にあります」
 昭汰の言葉に、奈左水がここぞと説明しようとした所を、ナツが口を挟み、解説をしてしまった。
「…ナツ」
 言いたい事を言われた奈左水のこめかみには、少しばかりヒキツリの筋が浮かぶも、ナツは平然としたものだった。
「マスターより承っております。奈左水様は、どうでも良い事まで、次々と出て、話に収拾がつかなくなるため、私が先に説明するように…と」
「あの野郎、…家帰ったら、覚えとけよ…」


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