=第三章・第十部=
=3日目=

 

 キンコォーン…キンコォーン…キンコォーン

 授業の終わりか、始まりかのチャイムが鳴り響く。
「あら、もう?早いわね…」
 そのチャイムを聞いた奈左水が大きく息を吐いた。
「奈左水様、次は中等部三学年八組の授業ではありませんでしたか?」
「そうなのよねぇ…、面倒だけど、そうなのよ。あそこのクラスの野郎、妙にマセてるから、嫌いなんだけどな…」
「奈左水様…」
「あ〜、はいはい」
 奈左水の溜め息に、ナツは少しだけ怪訝な表情を返すと、ちょっと疲れたような表情で奈左水は頭を振った。
「じゃあ、すまないけど、ナツ。後はあんたに任せるわ。…ごめんなさいね、昭汰さん」
「いえ、こちらも無理をお願いしてるものですしね。では、また後で御礼に行きます」
「…まあ、お礼言われるほど、案内もしてないけどね…、」
「奈左水様、時間…」
「あ〜もう、…あんたはもう少し愛想と許容ある応対しなさいよね。まったく」
 再び、大きく溜め息を吐いてみせた奈左水が、それでも、最後は昭汰に笑顔を見せて、「じゃ、楽しんでらっしゃい」と告げて、手を一つ振ってから、駆け出していった。
 そんな後姿を、昭汰は手を振り、ナツは「お気をつけて」と、お辞儀をしてみせた。
 しばらくすると、廊下に少しざわめきが始まる。…
 学生達のトイレ休憩が始まったのだろう。
「では、まいりましょうか…昭汰様」
「あ、うん…よろしくお願いします」


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