=第三章・第十一部= |
「お、ナツじゃん」 ふと、トイレ休憩で出てきた生徒の注目が昭汰とナツに集まりだした頃、そんな声が上がる。 「なんだ、昭汰さんも一緒なんだ」 そこに見たのは、学生服姿の水沢久美の姿だった。 「お〜、久美ちん、どしたの〜?」 そして、その影からは、まだ顔を合わせていない久美と同じ恰好の少女がひょっこりと顔を出す。 「奈々美〜、こいつが、言ってた手品師よ」 さっきは、[さん]づけだったのが、いきなり[こいつ]呼ばわりされるのは少々癪なものであったが、奈々美といわれた少女にその表情を見せるのも悪いと思い、昭汰は小さく口元を結ぶ。 「ほほ〜、なるほど〜」 そういわれた少女は、その頭のツインテールをフリンっと揺らして、彼を見た。 「なるほどなるほど」と、彼の周りを見て、「やっぱり、普通の人なんだ〜」と言った。 「普通じゃないって、どういうのなんだろうね…」 彼女の言葉に、そっとそううそぶいてみせる昭汰。 「まあ、そうね。…こういった奈々美なんてのは、ナウと一緒で、普通じゃないわね」 そんな彼の言葉に、久美がくすくす笑い、そう言葉を言うと、奈々美が小さく頬を膨らませる。 「…」 それを聞いた昭汰は、奈々美を見返す。 「彼女も、室戸君みたいに?」 「ま、その部類ね。結構、学校内じゃ有名な頭のネジがおかしいお馬鹿ちゃんってとこかな?」 |