=第三章・第十三部= |
「これで一通りでしょうか?」 ずいぶんと歩かされたような気がする。…時間にしても1時間弱だ。 校内の広さは、あの階段にも勝るとも劣らない…そんな感じもある。 高等部の方を回り、中等部は同じ構造であると省いたが、気にかかった山奥の屋内プールと総合体育館、そして、中央棟のオープンテラス、図書室、総合教務室、総合図書室と周り、…最後の食堂にて、足を止めたのだが、…少し疲れた昭汰は、その一席に腰を下ろした。 「改めて、だけど、とんでもない学校だね…。ここ、…」 こんな片田舎に構えるにはおかしいデザインだが、田舎だからの土地価格を考えれば、これだけの事が出来たという考えもある。 「文化祭だと、…一クラス毎に店を設けたら、これ全部回るのって、大変だよね…」 「そうなりますね。1学年に15クラスですから、全数で70店舗となりますね」 「うへ…その数じゃ、ちょっとしたショッピングモールっぽいね…」 「ですから、共同出資という形を取り、店舗は1階の教室の30までとし、体育館では、9時より14時までを30分ほどの寸劇を7劇、14時より16時までを合唱コンクールとしております」 「クラスによって、催し物か劇か合唱か、に絞って、それを練習するわけだ」 「そうですね。…もっとも、ほとんどクラスの教育方針をベースにしておりますから、経済コースの生徒が催し物を、芸術コースが寸劇、合唱を受け持っております。普通コースはその生徒と混じって行うといった所でしょうか」 「…」そこまでの説明を聞いて、小さく溜め息を吐く昭汰。 「なんか、僕、ここでやるの、気が引けてきたな…」 「…」 その言葉に少しばかり、ナツは悲しそうな顔を見せる。 「そう申されるのは少し残念ですね。春日さんも水沢さんも、もちろん、室戸家の方々も…楽しみにしておりますから」 「あ、いや…そういう意味じゃ」 そのナツの言葉に、昭汰は慌てる。 「ここの学生が皆、がんばって催し物をするんだ。それを僕みたいなよそ者がぽっと出ていいものか、と思ってね」 |