=第三章・第十八部=
=3日目=

 

「昭汰さん」
 夕方にも差し掛かろうとする頃だろう。
 ある程度の事が決まり、昭汰が持ち場となる食堂の一角をどのように区画するかの検討をナツとし始めた時である。昭汰の背後にそんな感じで声をかける、兎萌の姿があった。
「お話はまとまったみたいですね。久美から聞きましたよ」
「あ、ああ、だいたいはね…」
「楽しみですね、本当。ね、ナツ」
「そうですね。私もですが、姉や妹達もとても楽しみにしている模様です」
「…はは、本当、過剰な期待だな…」
 すでにそれも口癖になりつつあるようなので、「自重しないと…」と、付け加えた。
「でも、本当に受けてくださるなんて、思わなかった」
 少しだけ、立っていた兎萌が、昭汰の横の席に座る。
「あれだけ、ナウに言われて、…それでもやろう、なんて…、本当、いい根性してるな、とも思ったわ」
「…けなしにきたんです?」
 ちょっとだけ、むっとした昭汰がそう、言葉を返すと、兎萌は小悪魔的な笑みを見せ、「…半分は、そうかもね」と、うそぶいてみせる。
「なんでだろうな…」
 ふと、昭汰は呟き、外を見た。
「この町へ来て、僕は、…なんで、こんなにもがんばろうとするんだろうかな…?」
「…昭汰さん」
「今までの僕なら、…きっと、昨日にでもこの町を後にしてたかもしれない。でも、今がんばってる…」
 夕日にけぶる…その町を見ながら、…昭汰は少し口元をすぼませる。…

 「なんでだろう…ね」


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