=第四章・第一部=
=4日目=

 

 昭汰がここに訪れて、四日目の朝。
「昭汰さん、朝ですよ」
 と、兎萌が昭汰の眠る居間の戸を叩いた。

  返事がない…。

「昭汰さん?」
 今度は、不安そうにして、…再び叩き、…やはり、返事がないので、彼女は戸を開けた。
「昭汰さん…」
 その中は、きちんと布団がたたまれ、…昭汰の姿がなかった。
「…、…」
 すっと、血の気の引くような…そんな思いにかられた兎萌は急ぎ、部屋に入り、辺りを見回した。
「どうかしました?」
 そんな雰囲気に気づいたのか、居間の縁側で運動をしていた昭汰が、声をかける。
「あ、いえ…起きてられたんですか…びっくりしました」
「びっくりは、僕の方だよ。そんなに慌ててるから、何かあったのかと思った」
「いえ、昭汰さんが出て行かれたのか…と、思いまして…」
「…いや、まあ、そんな事はしないよ。一応、居候させてもらってるんだし…、出かける時は、声はかけるさ」
「…そうですよね…」
「商売道具も置いて出るのも、さすがにないよ」
 何かほっとしたような…兎萌の表情に、昭汰はクスっと笑う。
「今日は少し早めに散歩してみようかな…と思ってね、どんな人が住んでるのか、…見てみたいし…」
「そうですか…」
 そして、昭汰は、「御飯?」って聞くと、兎萌は小さく頷き、「はい」と、言ったのだった。


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