=第四章・第四部= |
「昭汰さん…」 不意に、…杉田が言葉をかけた。… 「もし、貴方がよければ…、この町に残るって事も、あるのよ」 「え…」 その突然の申し出に、…昭汰は歩む足を止める。 「きっと、この町へ貴方が足を運んだのは、…偶然とかそういう事じゃなくて、然るべくして…訪れたとするなら…」 「…」 杉田の言葉に、昭汰は彼女を見つめ返すだけ。 穂の色が黄金色に染まった田園を風が駆け抜ける。 穂先がたわみ、黄金の細波が起こり、…長く伸びた杉田の髪を煽った。 しばらく言葉を失う昭汰に、杉田は「ぷっ」と噴出す。 「なんて、言ってみたら、私も格好良く見えるかな?と思ったのよ。冗談よ」 「冗談、…はは、冗談ですよね。…冗談…、」 杉田の言葉に、昭汰は空笑いをする…。そして、視線を田園にと走らせた。 それから、視線を杉田に向けて、苦笑とも微笑ともいえない、そんな表情で、言葉を送った。 「冗談だとしても、なんだか、本気になってもいいかな…って、思える町ですよね。ここは」 |