=第五章・第一部=
=5日目=

 

 この日は、少々慌しい朝であった。
 もう、明後日には文化祭が控えている為であろう。
 昭汰の起きた時には、もう兎萌の姿は無かった…。
 言葉数の少ない朝の朝食を頂き、昭汰の彼女の家を出る。

  今日は、行う為の順序等の最終確認である。

 こんなに朝早くに学校へ出向くのは、幾年ぶりだろうか?とも思える、秋の晴天の下、…さすがに少し離れた階段道を学生服に混じって上がっていく昭汰。
 に、幾分かの生徒がこちらを見ている。のを気にしながら、…上がっていく。
「…あなた、…」
 不意に、その昭汰を後ろから呼び止める。振り返ると、…そこに一度、彼が見た事のある女学生がいた。
「夏辺…美矢…さん?」
「以外に記憶がイイのね。お馬鹿面の割には、たいしたものだわ」
 なかなかの言い分にさすがにむっとする昭汰は「何でしょう?」と、問いただす。
 それに対して、美矢は軽くにらむ様に見つめ返した後、

   「何も」

 と、告げる。

 存外な言い分に間抜けな口をあける昭汰の横を彼女が階段を上がり、そのすれ違い様で
「この時間に見かけるはずのない人間がここにいたから、つい声が出てしまったのよ」
 と、言葉を残して上がっていった。
 さすがに、脳天にきそうだった昭汰は、ばっと振り上げる。…が、もう彼女の姿は、かなりの高さにまで上がっているようだった。
「…、…」
 もちろん、それで叫ぶとか、する訳ではないが、昭汰の心には、何か言いようのない憤怒ばかりがたまったのは確かではあった…。」


次に進む/読むのを終了する