=第五章・第二部= |
「お待ちしておりました。昭汰様」 のっけから、これである…。正直、そのラナの応対は調子が狂う感じを受ける昭汰であった。 さすがに真昼間の授業もある中から、食堂を陣取っての作業手順の確認はいかんだろう、という事で奈右闇が部長を務める[バンディッツ同好会]なる部室にお邪魔する事になったのだが、ドアを開いた瞬間、来るまでの間、始終、その場に立っていたかのように、ラナが深々としたお辞儀に仰々しい言葉を述べる…のには、…少々気後れ感を覚えるのも、彼でなくとも、やむないような気もする。 「えっと、その…そこまでかしこまった言い方されると、…逆に困る…なぁ」 「でも、昭汰様はお客様ですし…、」 「せ、せめて、…様は、やめてくれないかな?」 「…そうですか、…では、及ばせながら、…昭汰さん…で、よろしいでしょうか?」 「う…、まあ、それで、…」 「それでは、改めまして、昭汰さん、お待ちしておりました。さあ、こちらのお席へどうぞ」 兎萌や杉田と同じ[さん]なのに、どうにも異質感を感じるラナの[さん]づけに戸惑いつつ、部屋の中央にある安っぽい木の机と対に置かれたパイプ椅子。…の片方の背もたれを引いた状態で立つ彼女の様相にも…「自分で座りますから、ラナさんも座って…」とも言えず、昭汰は少しむずがゆさを覚えたまま、彼女の言われるままに腰を下ろした。 「お飲み物は、コーヒーでよろしいですか?それとも、お紅茶?」 「あ、いえ、…構い無く…」 「それでは、コーヒーにいたしましょう」 始終、なんだかこういうペースでいられると、どうにも仕事の打ち合わせ、という感じがでないなぁ、…と、呟きそうになる昭汰は、この[バンディッツ同好会]の部屋の中を見回す。 まず、2台ほどのデスクPCが置いてあるのは、文芸系なのか、機械系なのか、それを匂わす感じで、奥には電子機器の残骸とその工具が並び、案外、ロボコンにでるような…そういったモノを作っている所なんだろうか?…とも、感じられた。 「ラナさん、この同好会は何をしているんです?」 置かれた青磁器製の雅なコーヒーカップを見つめ、…それから、向かいに座したラナにそう尋ねると、 「…そうですね、マスターのお話では、[何でも屋]とは、申しておりました」 |