=第五章・第七部=
=5日目=

 

 もう明日には文化祭である…。
 にも関わらず、午後も勉強をしているというのは、正直、昭汰の過ごした学校生活を考えると、進学校というものはこういうのだろうな…。と感じてはいた。
 もっとも、文化祭の展示を行うのは、一階の教室だけという事なので、普段はその教室を使っている学生は上の階の特別教室を利用していると言うことだが…、…。
「改めて思うけど、凄い学校だな…」
「そうなのですか?」
 半歩後ろを歩くラナは、昭汰の呟きに問いただす。
「そりゃそうだよ…。一階にあるクラス数だって、15個あるんだよ…。そのクラス全部、特別教室で授業させて、文化祭用に空けるなんて、聞いた事ない…」
 横目で見ると、既に飾り付けの出来た教室ばかりが並び、…明日にでも賑やかしい雰囲気を醸し出すのだろうか…。
 それとも、こんな田舎町なのだから、さほどの人数も来ないかもしれない…。
 とはいっても、正直、今の昭汰にはさしたる事ではない…。

  むしろ、本番の日が近づくほどに、どんどんと動悸が異様な雰囲気を醸し出していた…。

 奈右闇や兎萌、…その仲間達も、昭汰の芸に賞賛を送ってくれた…。が、…
 本当に受け入れてもらえるのか…と、今までの芸人として回った町々で感じた恐怖が彼の心臓をわし掴む。

「あの、昭汰様?」
「あ、ああ…」
 昭汰の些細な心の変動に気づいたかのように、ラナが声をかける。
「ご気分が悪いのでしたら、総合保険室に向かいませんか?」
「いや、そうじゃないんだ…。そうじゃ…ないんだよ…」
 その大きく見開かせながらも眉だけはハの字に曲げ、心配そうに声をかけるラナに、昭汰は苦笑いを見せる。
「どうも、ショーの本番が近づくと、こう、心細いというか、…なんていうか…」
「…、…」
「でも、それを克服するのも、自分だから…」
「昭汰様…」


次に進む/読むのを終了する