=第六章・第二部= |
兎萌はいつもより少し早めに出かけていくのを、昭汰は見送り、彼女の両親と食事を取った。 父親の今日は楽しみだ、という言葉と、 母親の明日から寂しくなるねぇ、という言葉に、 少しこそばゆい感じを受けながら、昭汰は食事を終え、箸を置く。 「お世話になりました。長い間、泊めていただき、…感謝しています」 彼の言葉に、両親は首を横に振る。 「いやいや、この町への久々のお客人だ。私共も楽しませていただいた」 「そうですね。…昭汰さん、今日でお別れですけど、これからも遠くでお見守りいたします」 兎萌の両親は、そう言って、彼に負けじとお辞儀を返した。 ひとしきりの挨拶を終えた後、父親が「ところで、先程、杉田さんから電話があったんだが、…」と切り出した。 「舞台に出る前に、一度、店に寄ってくれないか?という事だったぞ」 |