=第六章・第四部=
=6日目=

 

「ごめんなさい、大事な祭典の前に、よけいな事をしちゃって…」
 知美は何かを振り切るように、顔を背ける…。
「あの…、知美さん」
 何かが、やはり引っかかる昭汰は、一歩踏み出した。
「その」「昭汰さん、…」
 もう一言を言いかけた彼の口元を塞ぐように、知美が口を開く。
「私は、あなたが来た事を忘れません…。もし、この町を出て、あの時の言葉を覚えていてくれたなら…」
 静かな店の中に、軽やかながらも、少し寂しさに憂う彼女の声が響く。
 それを昭汰は黙って聞いていた…。
「私は、あなたを歓迎しますわ…」
「…、…」
 知美の言葉の意味を、昭汰は探り、…それから、口元を緩め、「ありがとうございます」とだけ、返すのが精一杯だった。

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