=第六章・第九部= |
それは、目の前で起こった。 彼女と手はずを揃えていた受け渡し。 少し高揚心もあったのかもれしれない。 受け取った傘の柄に力が入り、手首が帰り、ラナの指先を穂先が凪ぐ。 「あっ」と、彼女は声をあげ、そして、手を引いた。 子供達のざわめき。奈右闇の友達のざわめき。 ただ、その中で奈右闇だけは…、口を結び、薄く眼を閉じる。 昭汰は自分の行為に慌て、それでも、ただ、さすがに町々を回っているだけの事はあり、 今の打開策を考える。…最中、彼女の怪我の状況も気になり、視線を向ける。 そして、我が目を疑った。 彼女の指先は、確かに裂けていた。 にもかからわず、その指を覆う事もなく、平然とさらしていた。 その指先からは、血液、と呼ばれる液体さえ、なかった。 「知ってしまったね…」 奈右闇が呟く…。 |