=最終章・第一部=
=最終日=

 

 「言ってる意味が分からない…お客様、…そうだよ。僕は、ここでは、お客様、だよ。でも」

「この、原線路界町は、[ShadowBlain]の作り出した町。そう、本来は存在さえしない町」

 「…、…」

「君が、もし、この町を後にした時、地図で探してごらん…。この町は存在しない事に気づく」

 「存在しない?だって」

「そして、存在しない町で、俺達は生活をし、ここで生まれた人間は、この場で生涯を終えるか、この学園で訓練する事で魔法の力を抑え、社会へと旅立つ…」

 「魔法の力を抑え…、社会へと」

「ただ、それだけでは、俺達も生活は出来ない。だからこそ、外部から資材を搬入する施設[ShadowBlain]を設立した」

 「奈右闇さん、[ShadowBlain]って、ただの会社じゃないんですか」

「そうだね…。この世界と、この町を繋ぐ架け橋。言わば、次元間のドアとも言える。まあ、詳しい話は、長くなるから、省かせてもらうがね。…そして、この学校も名前はあれど、存在はしない。でも、[ShadowBlain]が運用している事で、社会でも通用する地位を持つ。履歴に書いたとしても、[ShadowBlain]が経営しているという箔で覆われ、誰もこの町へは辿り着けない。辿り着く努力をしたとしても、そこには[ShadowBlain]という壁で遮断され、もみ消されるのさ。下手をすれば、探索者の命さえももみ消す、その結末さえ用意されている」

 「じゃあ、僕は、どうして…この町へ」

「君の持っている波長が、合わさったんだろうね。本来であれば、この町の住人と[ShadowBlain]に選ばれ取り込まれた人間のみが使えるはずの、外界と行き来できる機関に乗車できた、という事は、種族的根源の波長…、つまり、君はこちら側の人間に近しい力を持っていた、と言うことかな」

 「力、…」

「簡易ではあるが、俺達、この町の住人はセカンドと呼び、君のように、この町以外の外界の人間をサードと呼ぶ」

 「サード」

「推測だが、君の祖先になんらかの因果で訪れたセカンドの人間がいたのかもしれない。そして、遺伝子レベルに潜んだ系列が作用したのかもな…。もっとも、君の体からは魔法の息吹は感じられない。したがって、魔法を使う事はできないようだがね」

 「じゃあ、やはり、僕の事をあざけっていたのですか?」

「…?、ああ、違うさ…。君の行う技術と、俺達の使う能力はまったく別物だ。確かに、魔法を使うが、それは俺達にとって、呼吸するような事。君の使う技術は、様々な修練の末、使う事の出来る素晴らしい技だ。俺は君のように、あのような鮮やかな手品を演じれない。そして、俺達の使う魔法は、人々を楽しませるものではない…。外界に知られれば、…きっと、争いの手駒とされる、消耗品にされる、寂しい能力さ」

 「奈右闇さん…」

「もしも、君がこれからも外界でその技術で活躍できる場があれば、俺は応援をするよ。たぶん、もう、合う事も無いだろうが…。この楽しい一時をくれた客人の輝かしい未来が訪れる、その事を願っている」


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