=第一章・幕開け=

俺が空を求めた時

 

  一九九九年、それは星空の海から落ちてきた。凄まじい爆音と共に、地球の空気を引き裂いて…
 それは、巨大な物体であり、…衝突の衝撃は周囲にあるものを一瞬にして粉微塵にした。

 空からの贈り物は、人類に外宇宙に存在する異星人の存在とその異星人の所有するオーバーテクノロジーを初見する事になる。

 その存在を知った人類は、異星人のテクノロジーの所有を巡って、醜くも悲劇的な戦いを数年もの長い期間続けることとなる。
 統合戦争の勃発であった。

 …

 焼け野原になった大地。そこに幼き頃の俺は立ち尽くしていた。
 その町で過ごしたのは、産まれてから…10年の歳月も迎えていない時だったはずだ。
 両親に連れられていった公園も、友達と夕焼けの中、歩いた道も…朗らかな笑顔のあった自分の家も…全て荒野となっていた。
 静けさを取り戻したここには、未だくすんだ色の煙が立ち昇る。
 何が起きたのか、その時、俺には分からなかった。
 ただ、分かっているのは…大人の起こしたケンカにまきこまれて…俺の持っていたものは全て失ったと言う事だった。
 呆然とする俺。それを、青い空が…照りつける太陽が…薄汚れた俺を見下ろしていた。

 その青い空が恨めしかった。その空に舞う雲が、恨めしかった。

 統合戦争開始の夏…ことだった。

 …

 俺は戦争孤児として、自分の住んでいた町を後にし、近隣の焼け残った町の教会へと預けられる。
 俺と同じく、孤児となった者もたくさんいたが、自分の知った友達はいなかった。
 …俺は、独りになった事を幼いながら、自覚した。
 そんな自分に嫌気がさし、教会の生活の息苦しさも手伝って、その年の終わりに、教会から抜け出した。
 それからの日々は、苦渋の一言だろう。…生きる為に盗人まがいな事をしてきた。そして、何度となく…痛めつけられてきた。

 幾度目かの盗みによる罰で痛めつけられた俺の耳に…爆音が未だ響く。
 再び、この地区を戦争が襲う。空が瞬く間に破壊の光に包まれる。
 倒れ伏した俺の前で…それはただ鮮やかに…本当に、鮮やかな光を放っていた…。

 何も残ってない俺は、それに魅入った。…俺の生きるべく道がそこに見えた気がした。
 つまらない現実に別れを告げるために…俺はその光を…見つづけて…いた。

次に進む/読むのを終了する