=第一章・第三部=

=[超時空要塞MACROSS/セレモニー]=

 

 宴は…未だ続く。切れる事のない敵の集団。
 まるで腐敗物に集る蝿のように三角錐の戦闘機が飛び、南アタリア島近海の海に丸頭の砲台が浮かび、二足の足で上陸していく。

「………」

 たいした実力でもない敵に俺は少し不満を覚え始めた。
 死神は多くの命に満足はしている様子だが、正直、あまりの腕前のなさに欠伸が出そうにもなる。
「デルタ1よりスカル大隊へ!S5エリアが手薄になっています。至急、援護をお願いします」
「スカル7!S5エリアの援護に回れ。今、そのエリアに迎えるのはお前しかいない!」
 不意にインカム越しに女性管制官の言葉と隊長の声が同時に届く。
 口元が歪む。
「手応えはあるんでしょうね…」
 隊長へそう一言だけ送信し、ラダーを切り、そのエリアに飛ぶ。

 S5エリア、マクロス艦左腕部の町は焦土と黒煙の渦に渦巻いていた。
 俺のヴァルキリーがその黒煙を引き裂き、飛ぶ。
 上空にて、空中にも気を配りつつ、敵機の数と町の構図を叩きこむ。
「面白くしてくれよ!」
 町の中央道を横行する二足歩行機に狙いを定め、とんぼを切る。
 ファイター形状での高度計が悲鳴を上げるが、構わずブースターを踏み込む。
 敵機が俺の存在に気付き、対空砲火を開始してきた。
 しかし、対象が高速で接近しているのもあってか、標準が合わず、機体横の空を切る。
 ガンポッドのサイトが中央に合わさる。一気にトリガーを握りこむ。
 ガンポッドが唸り、目の前の敵機を蜂の巣とする。
 高度計が甲高さが増し、地面が急激に接近する。一気にレバーを引き、逆加速を行う。
 後部に回っていたバーナーノズルが180度転回し、まるで鳥の足のように地面に接地、そのまま、ホバリングするように地を走り、前方の新しい敵機に狙いを定め、ガンポッドを乱射した。
「こちら、スカル7。目標区域、S5エリアに到達。これより、戦闘に入る」
 二機の目標敵機を撃墜した後、左肩に望む巨大な戦艦、マクロスの管制室にコールを送る。
「こちら、デルタ1。了解。…」
 先程とは別の女性管制官の声が聞こえ、最後に「がんばってください」と、言葉をつづった。

「…がんばってください…か…」

 今まで無機的な対応も多かった管制官の…何を思ったかは分からないが、…その一言を反芻する。

 ガンポッドの乱射音、敵の攻撃音、爆発、その衝撃…
 乾いた心には、何もなく吹きすさぶ風のようなものだった。
 そんな中の彼女の一言、…それは今までにない衝撃だった。
 しかし、…

 …モット、モット、モットダ。

 その言葉をさえぎる音が響く。黒く圧し掛かる音。死神の声。
 瞳孔がしぼむのを感じる。彼女の声が掻き消える。
 黒い炎が自分の中に燃え上がるのを感じた。
 先程、叩き込んだ敵機の配置を反芻する。
 
 そして、俺の…鳥のような形状になった機体…ガウォーク状態で、半ば荒野と化した街中に…黒煙のたなびく街中に滑るように走り、消えていった。

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