=第二章・第六部=

=[超時空要塞MACROSS/帰還]=

 

 マクロス艦内の食堂に足を運んで、数分。
 宇宙空間を望める広めの広場で、不意に俺に話しかける女性オペレーターがいた。
「すいません、同席、良いかしら?」
 先に席についたフォッカーと輝も二人に視線を向ける中、「あ〜、…」俺はあまりの言葉に一瞬息を止める。
「おお、いいじゃないか。座れ座れ」マゴマゴしているように見えたのだろう。フォッカーが俺と彼女を手招きする。
「やっぱ、男ばっかりより花が合った方が良いからな〜」
 彼女が席についた所で、フォッカーは少し鼻の舌をのばしながら、高らかに笑ってみせると、それに少しだけむっとする輝は、一言呟いた。
「悪かったですね〜。花がなくて」
 そんな輝にバンバンと肩を叩きながら、さらに「うあわっはっはは、ひがむなひがむな」と、笑うフォッカー。
 俺はそんな光景を横目で見ながら、話しかけてきたオペレーターに視線を向ける。
 白い肌に人形のような顔、そして金髪に近い栗色の髪というべきか、さらさらのロングヘアが目を引いた。
 俺が見ているのに気付いたように彼女も視線を向ける。
 緋色の瞳が自分の顔を覗きこみ、薄い紅色の唇が微少を浮かべる。
「そういえば、君は新顔かい?マクロス所属の女性オペレーターとは、そこそこに面識があるんだが」
 フォッカーがなかなか切り出さない俺に業を煮やしたのか、口火を切ってみせる。
「はい」オペレーターはフォッカーの方を向いて、今度は、少し影を落とした笑みを見せた。
「元々は空母プロメテウス所属でしたが、物資輸送の手伝いを行ってた際、マクロスに乗船していたんです」
「なるほど」彼女の言葉にフォッカーも少なからず、眉を歪める。
「まあ、命があっただけでも、良かったというべきかな」
「そうですね…」少々、彼女も寂しそうな顔をしながら、答えてみせた。
「あ、私、エマ・グレンジャーといいます。今後、ヴァルキリー部隊のオペレーターに就任する事になりました。何かの機会があれば、部隊の指示に入ると思いますので、以後よろしくお願いします」
 何かを断ち切るように声を上げて、軽やかな笑顔を見せながら、彼女・エマはそう言った。
「ああ、よろしく頼むよ。エマちゃん」
 それにフォッカーはさも嬉しげに返事をし、反応のない輝の背を叩く。
「…もう。まあ、よろしく」
「…よろしく」
 少し咳き込みながら輝は答え、俺も自動ロボットの持ってきたコーヒーを飲みながら、そっけなく返事をして見せた。
「………」
 ある程度の挨拶が終わって、再びエマが俺を見る。
「…なんです…」
 俺は、そんな彼女の視線に多少煙たさを感じ、怪訝な返事を返した。
「…覚えてません?」
 不意の彼女の一言に俺は動きを止めた。改めて、エマの顔を見た。

「………」

「あ〜、いいかな?」フォッカーが困惑する俺に代わって、エマに声をかけた。
「そいつはどうも、そういうのに疎いようでな。良かったら、話してくれないかな?それで思い出すかもしれないぞ」
「…ふう」俺に思い出してもらえなかったのが、よほど失意だったんだろうか。彼女は軽く息を洩らしてみせた。
「えっと、ですね。…統合戦争が終わって、しばらくしての事です」
 少し、重たそうに口を開いた彼女は、ゆっくりと俺との昔話を話し始めた。

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