=第二章・第七部=

=[超時空要塞MACROSS/帰還]=

 

「ほ〜、こいつがね〜」
 エマの話にフォッカーが面食らったような声を洩らす。それほど、俺には程遠い出来事に思えたらしい。
「そんな事もあったかな…」
 もちろん、俺にとっても、記憶の隅を突つくような事だったので、軽く受け流すだけだったが…。
 話的にはたいした事ではない。
 統合戦争が終わって、暇を持て余してた兵士が嫌がる彼女に言い寄ったらしいのを俺が救った。という話だ。
「覚えてないんですか?」
 彼女は少しだけ頬を膨らましてる。そう言われても、仕方のない事だ。
 たぶん、俺はその時、暇を持て余してたのだろう。口実の良い暇潰しのケンカだった様な気がする。
「まあまあ、いいじゃないか」フォッカーがそんな二人の状況に口を挟む。
「昔は昔だ。今からを楽しめば良いじゃないか?ん〜、なあ、輝よぅ〜」
「ぇえ〜、お、俺に話を振らないでくださいよ〜」
 なるべく関わらないように食事をしていた輝にフォッカーが肩に手を廻しながら、関わらせようとするように話しかける。
「もう、何馬鹿やってんのよ」
 ふと、フォッカーの背後に黒人の女性オペレーターが立っていた。
「よぉ、クローディア」
 背中越しに見上げるフォッカーがにこやかに笑い、そのオペレーター・クローディアに声をかける。。
「そろそろ、時間よ」
「おお、そんな時間か」クローディアが軽く眉をひそめるのに、フォッカーは今気付いたような声を上げた。
 そこでフォッカーが思案し、「じゃあ、輝。行こうか」と、輝の肩を取る。
「えぇ?なんで、俺が…」
「まあ、いいからいいから」
 ハッハッハッと笑いながら、輝を引っ張り上げ、俺とエマを残したまま、退席する。
「………」
「何があるんでしょうね?」
「さあ…」
 なんとなく残された、二人。特に会話をする事もないので、気を紛らわすように俺はコーヒーを飲み、彼女の小さな疑問に、とりあえずな返事を返してはみたが、…やはり、会話の兆しもなく、…息につまり出した俺は、視線を宇宙へと向けた。

 満天の星々が流れる空は、そんな二人に返事をすることもなく、ただ雄大に広がっているだけだった。


次に進む/読むのを終了する