=第四章・第六部= =[超時空要塞MACROSS/アポロ小隊]= |
デルタ1よりの指示が飛ぶ。 俺の周囲に乱雑に並ぶビル郡は、自機からの確認は難しい。ビルがレーダーの波を阻み、所在地を判別しにくくする。 敵数や状況的には、不利はあるものの、唯一、有利というならば、それはデルタ1よりの指示だろう。 マクロスそのもの自体がレーダーなのだ。俺達は、マクロスの手の中にいるのだ。 「アポロリーダー、12時方向、E12エリアのビル物陰に潜んでいます。注意してください」 「了解…」 敵の潜むとされるビルが見える。持久戦ならば、ここでじれるのを待つのもいいかもしれないが… あいにくそういう状況でもない。人型のバトロイドでいっきに駆け出す。 アポロリーダーとなり、機体もA型からJ型に変わった。 機体自体の大きな差はないが、バトロイド形態での武装の変更が特徴的だ。 人型になった際の頭部についているレーザー砲が頂頭部に1門だけ装備されていたものが、耳の位置に1門ずつ、ヘッドホンをはめたような形になっている。 もちろん、その機動力、探査性能も向上しているわけだが、… 物陰に隠れていた敵機も俺の行動に行動を移す。半身を現し、片腕を突き出そうとした。 が、それよりも先に、俺はガンポッドを連射、敵機の腕に仕込まれた機銃を打ち抜き、爆発させた。 爆炎に目を向く敵機の頭部にガンポッドを押し付け、抵抗させる間もなく、打ち抜いてみる。 自分よりも僅かばかり大きな人型兵器が倒れ、…消え去った頭部からドクドクと血が吹き出した。 「…いつみても嫌な光景だな」 ソウカイ? 俺の呟きに心の死神が微笑んだ。 オレハウレシイゼ 俺達の相手をしているゼントラーディというのは、巨人族である。その身長はゆうに5mはあるが、その形状も俺達人間と大差はない。 当初、俺達の戦闘機ヴァルキリーが、飛行機形態のファイター、人型形態のバトロイド、そしてその中間となる鳥状形態のガウォークに変形する事に何の意味があるのか、疑問に思ったものだ。 だが、このゼントラーディに出会って、初めて分かった。俺達のこのヴァルキリーはこのゼントラーディと戦う為に作られたのだと。 人型形態であるバトロイドの身長もゼントラーディと同じ程の身長となる。 つまり、ゼントラーディが生身である場合と同じサイズという事だ。 戦闘には不向きに思えた多重関節と連動機を有したバトロイドの手は、ゼントラーディの手を模した物であり、もしも、自分達の武器を失った場合でも彼らの戦闘装備を奪い、使用することを可能にする事を前提していたわけだ。 今、この場で打ち抜いた人型の敵機は、宇宙空間を移動できる宇宙服でもあり、巨人族を守るパワードスーツという事になる。 …俺の銃器が打ち抜いた頭部には、その巨人族の頭部があった事になるのだ。… 「アポロリーダー?どうしました?」 不意に、オペレーターが話しかける。倒れ伏したゼントラーディの死体に向いていた意識を戻す。 「いや…何でもない」俺は、頭を軽く振り、インカムに捕らえられないように言葉を洩らす。 「問題はないさ…人間ではない。大きな体躯の化け物…なんだから」 「アポロリーダー?」 「いや、独り言だ。敵機を一機、撃破。次の指示を待つ。一番近い敵機はどこにいるんだい?」 「了解しました。敵機は、そこより三時の方向にいます。もう少しで完了します。頑張ってください」 「アポロリーダー、了解」 オペレーターへ返答し、背部と足裏のノズルを噴く。ビルを越える様にその場を去る俺は、…倒れ伏すゼントラーディの死骸を…消えるまで見つめていた。 |