=第五章・第二部=

=[超時空要塞MACROSS/土星]=

 

 俺が搭乗を終えて、乗り心地を確認する中、機体に隣接していたタラップが外される。発進のためのスイッチ操作、確認、メーター、受信…様々なチェック項目をこなし、発進のスタンバイに入る。
「…そうだな」ふと、後部座席に座るオペレーターのことを思い出す。
「同乗者の顔くらい、見ておくかな…」
 サイドモニターを後部座席に繋ぎ、インカムを切りかえる。
 一瞬ザラついたモニターが鮮やかになり、オレンジ色の一般作業者用パイロットスーツとメットを被った…エマの顔が映し出された。
「…お前、…」
「………」一瞬、息を止める俺に…エマは少しだけ強張った笑顔を返す。
「少しは、皆さんの気持ち、理解してみたいと思って…」
「恋人と乗るジェットコースターとは違うぞ。もちろん、遠目で見る曲芸サーカスでもない。お代が自分の命というカーニバルになるんだぞ」
「分かってます」
「死んでも良いんだな?」
 俺の言葉に、エマが黙る。…そして、ゆっくりと口を開いた。
「軍人になった以上、その覚悟はできています」
「…分かった」エマの言葉に俺は腹をくくった。
「まあ、一応、快適車での運転じゃないから、メットの中にエチケット袋でも張りつけておけ。探査画面が見えるようにな」
「…安全運転に、とは言いませんけど、エチケット袋を入れてないですから、自重してくださいね」
 少しでも、彼女の緊張をほぐすつもりで冗談をいうと、少しだけ緩んだ笑みが返ってくる。
「アポロリーダーよりデルタ1へ。探査機[エリントシーカー]の準備は整った。いつでも発進可能だ」
「こちら、デルタ1のヴァネッサ。これより、探査ポイントの支持を行います。こちらの指示にしたがって、飛んでください。エマさんも、無事に戻ってくださいね」
「はい、よろしくお願いします」
「エリントシーカー、発進する!」
 作業員の指示にGOサインが出る。俺は、スロットルを入れ、土星のリングに飛び立った。

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