=第五章・第四部=

=[超時空要塞MACROSS/土星]=

 

「おかしいですね。敵が見つからない…」インカム越しにエマのぼやきが聞こえる。俺も同意見だ。
「こちら、デルタ1。探査空域での敵機は確認できませんでした。…おかしいですね」
 俺達のヴァルキリーが飛び立ってから、数分…これで4箇所目のエリア探査となるが、一向にかする気配がない。もちろん、ヴァネッサの方にも焦りが見える。時間を考えれば、猶予がない事は分かる。
 こうしている間にもマクロスへ大多数の敵機が襲来しているのだ。…今の処、マクロスが落ちる気配はないようだが…
「次の探査データの検出はまだか?」
「今、コンピューターで計算しています。もうしばらく待っていてください」  …そう言いながら、うっすらとだが、…俺には確信があった。
「エマ、オペレーター」メットの位置を直すように、首を振り、サイドモニターに再度エマを表示した。
「次に来ると思う。装備にしても状況にしても、俺の体験した中でも最低な条件だ。落とされる危険性もとても高い。君が乗っている事を前提に戦うつもりではいるが、そうも言えない状況になる事がある。分かるな」
「…はい」
「君という存在を忘れた戦いをするかもしれない。とにかく、戦闘に入ったら、声を上げず、じたばたせず、人形のように動かないでいてくれ」
 そこで一息をつく。エマの言葉を軽く待つが、答えはない。それに、俺は口の端を押し上げる。
「君の声は、俺の中の死神を鈍らせる。頼んだぞ」「えっ?」
「デルタ1よりアポロリーダーへ。探査空域の検索ができました。次のポイントに向かってください」
 俺の言葉にキョトンとした表情を見せるエマの言葉を遮る様にヴァネッサが連絡を入れる。
「アポロリーダー、了解。指定ポイントへ向かいます」
「え、えっと、今のは、どういう事です」
「オペレーター、任務中だ。私語は慎んでくれ」
 戸惑いの表情を続けるエマを確認した後、サイドモニターを切り替え、スロットルを吹かす。
  サア、モウスグダナ
 乾いた声が心に響く。俺の確信は、確実なものとなった。
 俺の中の死神が、蠢き出している。戦闘が近いと、告げていた。

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