=第五章・第六部=

=[超時空要塞MACROSS/土星]=

 

 相手は、前方の大型ビーム砲を発射してくる。
 予測できる範囲で回避行動を取ると、俺のいた場所を白色の光が通り、その軌跡に触れた氷塊が消え失せた。
 氷塊を利用し、相手の砲撃、ミサイルをかわし、とにかく相手の出方を探る。
 削れる氷塊を背に、間断なく降り注ぐ攻撃。まるでゴキブリ一匹を倒すのに殺虫剤を十数本で浴びせるようなイメージを持った。
 氷塊から氷塊に移る際にガンポッドで打つも、距離もあるだろう。思いのほか、俊敏に動き、多少の着弾では、効いてもいないようだ。
 やはり、こちらの装備では、奇襲に近い攻撃、さらに接近した状態でなければ、相手にできないだろう。
 弾がある程度まで切れてから攻撃に移りたいとも考えるが、…残念ながら、この機体では、それを待てる程の推進剤(宇宙空間で飛行を可能とする燃料)を詰めているはずもない。
「ふん、やはり、一発狙いだな」ある程度の腹をくくる。こちらの機体の性能も逃げながら、確認した。そして、敵はどうやら、小型過ぎるがために俺の機体を感知できないようであった。
「さて、いくとするか…」
 敵の攻撃を氷塊で回避しながら、心を静める。…

 声が聞こえる。…
  オォ ヤット デバンカ?
「あぁ、出番だ…」
  コンカイハ オモシロイコト ト ナッテイルナ
「そうだな、できない事もないだろう?」
  モチロン タダシ ホショウ ハ ゴブゴブ ダ
「命がもっとほしいんだろう?」
  アタリマエサ ダカラ マダ…イカシテヤルサ
「じゃあ、イコウカ…」

 声が響き、目が曇る。…心が沈み、音が消える。
 目の前は暗くなっていく感覚に包まれるが、徐々に…敏感になっていく。
 スロットルを握る手に力が抜ける。ただ、放心ではない。
…感覚、俺自身がヴァルキリーになっていく。そんなイメージだ。
 ジュンビ ハ スンダゾ
「トッタ イノチ ハ オマエ ガ クラエ」

 俺のヴァルキリーが氷塊を飛び出す。目の前に映る敵機の左側面に向け、戦闘機形態のファイター状態でノズルバーナーを噴射する。
 敵が気付き、こちらに向け、旋回しながら、ミサイルや砲撃を開始してくるが、俺の目には止っているように遅く映り、その弾を掻い潜る。
 巨大砲がこちらを向き、発射されるが、俺は素早く鳥状形態のガウォークに変形、上昇。これをかわし、再びファイターになる。
 俺と敵の距離が狭まる。狙いを定めず、数発のミサイルをばら撒くと、敵はそれを打ち落とす。
 凄まじい爆発光が中間で起きる。それを目隠しに俺は、人型のバトロイドへ変形。敵機の上面に取りつき、ガンポッドをミサイル口を集中的に狙い、叩きこむ。誘爆するミサイルによって、敵機の中で呻き声の如き音が振動で伝わってくる。
 反撃の気配を感じなくなった俺は悠々とガウォークで敵機を離れ、残ったミサイルを叩きこんだ。
 内部崩壊と外部からのミサイルで、敵機が粉砕爆発し、…静寂が、訪れたのだった。

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