=第五章・第七部=

=[超時空要塞MACROSS/土星]=

 

 宇宙ゴミのように散らばる敵機の破片を見つめている内に、俺の中にいる死神が引き上げていく。
 瞳に色が戻る。耳にヴァルキリーの動作音とレーダー音が入ってくる。
「…終わったぞ、エマオペレーター」
 インカムを通して、戦闘の終了を告げた。…しかし、返事がない。
「おい、エマオペレーター。吐いたか?だから、エチケット袋、貼り付けておけと言ったんだ」
 サイドモニターを切り替え、少し蒼白な表情のエマを見て、そう言ってみせると、「は、吐いてません!失礼ね」と、むっとした表情で、エマは反論する。
「これからは、あんたの仕事だ。急いでやれよ」
「分かりました。…もう」戦闘の緊張感が一時的になくなったせいだろうが、少し脹れ面を見せて、作業を開始する彼女。それを少しだけ息を吐いて、見守っていた俺に「ちょっと、何ボッとしてるんですか」と、サイドモニター越しに、不機嫌いっぱいな表情のエマが指示を出してきた。
「早く、指定ポイントに飛んでください。敵旗艦の正確な位置を出さないといけないんですから、さっさと移動してください」
「…はいはい、分かりました。まったく、なんでマクロスオペレーターは強面ばっかりなんだろうなぁ」
「なんですって!」
「アポロリーダー、指示座標に向かいます」
 二人きりの閉鎖空間に、彼女の声が響くのが、…未だ、戦闘中だというのを一瞬忘れて…楽しくも思えている俺がいた。
 死神とは違う、声色は…俺の脳髄を軽く刺激する。…それは違和感を覚えながらも、今までに感じてばかりいた他人の声の強烈な嫌悪感を感じる事はなかった…。

 静かになった氷塊の海の中、俺の機体が動き出す。
 その周辺には、既に敵機の残骸は飛び散り、確認する事はできなかった。
 俺は、その何もなくなった空間をただ一瞥し、指定された空域へ向けて、進路を切った。

 その数分後、俺の機体は敵旗艦を捕らえ、マクロスへ通信。
 マクロスの主砲発射により、敵旗艦を撃破…、俺達の勝利が決まった。

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