=第五章・第八部=

=[超時空要塞MACROSS/土星]=

 

「こちら、デルタ1」敵旗艦の消滅を目の当たりにした俺達にヴァネッサの声が届く。
「敵旗艦の消滅を確認。任務完了です。ご苦労様でした。アポロリーダー、それにエマ。帰艦してください」
「アポロリーダー、了解。これより帰艦する」
 俺はラダーを切り、氷塊の上を目指す。さすがに敵もいないのに、衝突事故の危険のある中を飛んで帰る気はない。
「…いつも、あんな戦い方なんですか?」不意に、エマが…俺に言葉をかける。
「いつも、あんな無茶苦茶な戦い方をしているんですか?」
「…まあな、それで俺は生き残ってきた。…」
 少し押し黙るエマは、ゆっくりと口を開いた。
「あの時もそうだったんですね。トランスフォーメーションを行ったあの時も…」
「………」
「怖さとかないんですか?…」
「俺一人が死ぬ事は対した事でもないし。俺が一人で死ぬまで落とし続ける事で少なからず、マクロスを守る事に貢献している。それでいいじゃないか…それ以上でもそれ以下でもない。オペレーターが気にかける事じゃないさ」
「…」
「戦時中の軍人の一般兵は、人間とは違う。ただの駒だ。人一人の重さじゃない。守る事が大切なんだぜ」
「何を守るんですか?そんな戦い方で守るものってなんですか?」
「しつこいな…、今だから、聞いてるんだろうな。この場にいるのは、俺とお前だけだ。戦闘の緊張も切れて、話し相手でもほしいんだろう?」
 だんだんと相手にする事がだるくなった俺は、最後にこう言った。
「俺は、誰かのために戦ってるんじゃない。何かのために戦ってるんじゃない。…自分が最高に思える死に様を求めて、戦っているんだ。それでいいだろう?納得してくれ」
「…」
 エマは黙り込む。そして、…「待っている人がいたら、…その考えも変わりますか?」と、声小さく聞いてくる。
 おれはその言葉に、答える気はなかった。いつしか、彼女の声は、…あの一瞬に感じた、心地よい感じの声ではなく、いつも聞こえる他人の嫌悪感を覚える声となっていた。
 スロットルを引く。この居心地の悪い空間に長くいたくなかった。

  そう、…彼女といると、だんだん俺自身が壊れていきそうだった。

 インカムを切り、スロットルを引きつづける。動かないと分かっていても、…それでも引きつづけていた。

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