=第六章・第一部=

=[超時空要塞MACROSS/ゼントラーディ軍]=

 

 エマと二人で戦闘に出た日、スカル大隊に所属していた一条輝が命令無視により艦内戦闘を行い、その結果の行方不明、そして、マクロス艦内で話題のアイドル、リン・ミンメイがその戦闘の際、行方不明になる事件が発生していた。
 その事件も一週間後、二人がそろって隔離エリアで発見された事で終止符が打たれる事となる。
 一躍、一条輝は時の人となり、隊員一同に話しかけられているようだが、俺にとって、特に気にかける項目でもない。
 もっとも、俺の部下の二人は気にかかるようではあるが、…

「あ、…」
 俺が一人で昼食を取っていた時、不意に声をかけられる。そこに一条輝が立っていた。
「久しぶりだな」
「…ああ、まあな」
 なんとはない言葉を返すと、そのまま、俺の前に座り、手に持った膳を置いた。
「小隊長になったんだって」
「結構前にな…」
「やっぱ、大変か?」
「…さぁな…」
「そっけない奴だな」
「特に話をする事もないだろう…俺の勝手だ」昼食を取り終え、コーヒーを口に含む。
「残念ながら、俺は悩み相談所じゃないからな。今、お前の抱えている問題の答えは持っていないぞ」
 つい先程、俺達の部下の小話を耳にしていた俺は、輝に何か持ちこまれる前に釘を刺しておいた。
「ちぇ、なんだよ、それは」
 椅子に背もたれるように伸びる輝を見て、俺は席を立つ。
「本当、そっけない奴だな…」
「性分さ…。分かれよ」
 そして、輝の前から、俺は立ち去った。…
「ふう…」
 一人になった輝は、溜め息混じりに伸びをしてみせる。そして、ご飯茶碗を手に取った。
「えっと、そこ、よろしいですか?」
 不意に輝に声をかける人がいた。輝が見上げると、エマが立っていた。
「え、ああ、どうぞ」
 少し戸惑いを見せながらも、輝は席を勧め、先程まで彼の座っていた場所にエマが座る。
「…」
 そのエマの表情は少し暗く、手に取ったパンを少し弄る仕草を見せたまま、口に運ぼうともしなかった。
「大丈夫?…元気がないみたいだけど」
 一応、知らない人間でもないので、輝はエマに声をかける。
「…いえ、…相談する事じゃないですから」
「そう、それなら…いいけど」
 輝が小さく呟き、…食事を続ける。
「それにしても、大変ですね」しばらく、黙って食事を取っていた二人だったが、不意にエマが口を開き、輝に話しかけてきた。
「最近、噂ですごいですよ。あなたの事…」
「…うん、まあね」その言葉に輝も表情に影を落とす。
「僕のせいで、ミンメイに迷惑をかけてると思うとね…悪いことをしたな、って思ってるんだ」
「あっ、…ごめんなさい」
 エマの言葉に輝が首を横に振る。
「いいさ、どうせ、僕は、ミンメイに、会うことはないんだから」
「………」
   カタン…
 食事を終えた輝が立ち上がる。
「…お先に失礼するよ」
「あっ、はい…がんばってくださいね」
 エマも少し複雑な表情で、それでも…口元だけは微笑ませて、輝の後姿を見送った。

  ………その数日後、輝、ミンメイ、そして、早瀬中尉とフォッカー少佐が姿を消す事となる。
  ………マクロス内で駆け落ちや失踪などの説が飛び交い、再び騒然とする日々が流れていった。
  ………そんな中、俺の部隊は、あるオペレーションを請け負う事となったのだ。

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