=第六章・第四部=

=[超時空要塞MACROSS/ゼントラーディ軍]=

 

「隊長、艦内の様子はどうですか?」
「電気のスイッチが見当たらないね。後、インターホンつきのチャイムボタンもないな」
 外観を警備するアポロ3の通信に冗談を返しながら、ガウォークの形態で船内の通路に着艦する。
 作戦の決行時間を過ぎ、俺達の部隊は、大破した敵艦に向かう。
 アポロ2とアポロ3が持ち場に着き、俺は艦内に潜入を試みた。
 敵戦艦の外面は戦闘痕が大きくあり、機体搬入口と思われる通路への侵入も楽であった。
「敵艦内への侵入を確認しました」エマの表情がサイドモニターに現れ、インカムを通して俺に話しかける。
「マクロスより中枢と思われるポイントを送信しました。ポイントに向かって、進んでください」
「アポロリーダー、了解」
 ファーストパックとヴァルキリー下部にセットしたライトを付け、艦内を見回しながら、支持ポイントに向けて、走り出す。
「アポロリーダー、一つ、質問はいいですか?」
 戦痕で出来損ないのつぎはぎのようにめくれた廊下をガウォークでのホバーで滑走する俺にエマが話しかける。
「手短に…無駄話は抜きだ」
「…あなたのカンで、敵機が出てくる…そう判断していますか?」
「………」エマの言葉にしばらく口をつぐみ、周囲を見回す。
「難しいな…」
 視線を前方に戻し、俺はそう答えた。
「ここには、様々に死骸が浮いている。死の匂いが強い。鼻がきかないな…」
「…そうですか。注意してください」
 そう最後に一言だけ語り、彼女を写していたモニターが消える。
「…ふう、…」
 インカムに入らないように息を吐き、…彼女に俺の性質を軽く見せた事を後悔しながらも、周囲に視線を巡らせた。確かに、…この艦内には生存者の匂いは感じない。浮かび上がる無人の大破した戦闘ポッドや腐食せずに浮き続けるゼントラーディの死骸、死の匂いに包まれている。心の奥底に燻る黒いモヤが喜び、沸きあがろうともする。
 戦闘が始まる要素の決定的な証拠のない状態でこれだ。…判断が難しいの一言に尽きる。
「まあ、…それでも怪しいといえば、怪しいからな…」
 結論、ここは遊園地のお化け屋敷ではない…敵陣の中だと思い、…意識を周囲に四散させる。
 少しでも…敵の命を探り出せるようにに…

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