=第七章・第二部=

=[超時空要塞MACROSS/火星[MARS]]=

 

「アポロ小隊各位へ、作戦行動の説明に入ります」
 ヴァルキリーのコクピットに座り、火星表面をモニター越しで眺めながら、サイドモニターに映るエマの支持を聞く。
「今回の任務は、火星ベースのサラ基地に残る資材の搬入の支援、周辺警戒をになっていただきます」
 いつもなら、空をそのまま見れるキャノピーでいるのだが、今回の任務では人型でいるバトロイド形態を保っている。そのため、コクピットが機体に内蔵される事となり、周辺機材で圧迫されたその閉口空間に俺の顔が歪み、小さな溜め息が漏れた。それに気づいたのだろう、エマが不振そうな顔を見せた。
「アポロリーダー、気分が悪いんですか?」
「ああ、いや…どうも、バトロイドは好きになれなくてね、この窮屈感がな」
「仕方ないですよ。今回は、特一級配備のため、アーマード着装ですから。それはバトロイド形態でないと、装備ができませんし」
「あ、もしかして、閉所恐怖症ですか?隊長」
 エマとの通信にエディが割り込む。言い方に少しイラっとくる感じは覚えたものの、「馬鹿か?お前は」とだけ言っておき、エマに視線を向けなおす。
「火星の空を、こう…キャノピー越しで見たいってのはあったからな」
 そう言って、バトロイドの頭部を下に向け、その腕をモニターに映し出す。そこには細身の腕に重量感のある外骨格装甲が巻き付けられていた。
 アーマード装備とは、文字の通り、外装防御を施したユニットを機体に張り巡らせる鎧装備である。対弾性を上げると同時に、その鎧内部には通常では装備できない程のミサイルを組み込む事で敵の掃討力を上げたものであるが、言っての通り、甲冑のようなものであり、このヴァルキリーの売りとする変形機能を封印してしまっている。そのため、局地的戦闘や防衛壁用に開発された装備といえるだろう。
「しかたありませんよ」再度、深い溜め息を漏らす俺の様に、エマも共感したようで、苦笑を見せる。
「けれど、アポロ小隊が今回の任務での最終防衛線だと考えてください。この資材運搬には、ボランティアで参加している一般人も多数います。彼らのためにも、十分注意してください」
「もちろんであります!」エマの言葉に、一言言おうとした俺を差し置いて、エディが声をあげる。
「…〜あ、…まあ、…アポロリーダー、任務了解。これより作戦行動に殉じます」
 少し出遅れる事、エマにそう送信すると、エマもまた、苦笑いを浮かべて、「頑張ってください」とだけ、答えてくれた。

 通信が切れて、…正面の火星表面を映すモニターを見つめながら、心を探る。
「死神…」
 俺は、小さく呟いた。自らの心に向かって…
「今の状況じゃ、…敵は濡れ手に粟だろうな…標的が停留しているんだ…来るんだろ?」
 − サア、ドウダロウネ…
「ほう」今までにない意外な反応に俺は言葉を漏らす。
「なんだ、俺がお前から離れたい言い回しばかりを最近するから、拗ねたか?」
 − ソウイウコトデモナイサ…タダ…ナ、
 笑いながら、死神が言葉をとめる。
 − ソロソロ、 オマエニハ アキテキタ…トイウコトカモナ
「…」死神の言葉に、俺は失笑する。
「つまり、俺にそろそろ、死んでほしいということか…」
 それに、死神は含み笑いをして、何も喋らない。…俺も、もう追及する気もない…。

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