=第七章・第六部=

=[超時空要塞MACROSS/火星[MARS]]=

 

「デルタ1よりセブン、イカルス小隊。アポロ小隊のバックアップはいいです。帰艦して下さい」
「ちょ、ちょっと、エマさん」
 エマの意外な通信に隣に座る通信士の一人が声をかける。
「大丈夫です。戦闘が終わって、直ぐに飛び立つためを考えれば、アポロ小隊で対処したほうがいいとおもいます」
「…そう、…?」
 それでも、訝しげにエマの顔を見るので、彼女は笑顔を見せる。
「今まで、あのアポロ小隊が任務に失敗したことがありますか?今度の任務にも、必ず戦果をみせてくれます。私は、そう信じています」
「…」彼女の自信に、きょとんとした表情をみせる通信士。…は、不意ににやけた表情を見せる。
「そういえば、エマって、アポロ小隊のリーダーと良い仲だったわね〜」
 通信士の言葉にドキッと跳ねるエマ。その行動があまりに面白かったのだろう。インカムを直すしぐさを見せながら、クスクスと笑う通信士。
「そ、そんな、私はそんな事!」
「はいはい、お惚気は今度じっくりね〜、任務任務」
 からかう言葉に声を上げそうになったものの、この声をアポロ小隊に、特にアポロリーダーには、聞かせるわけにもいかないので、なんとか踏みとどまってみせる。ものの、少しだけ頬を膨らませてもみた。…瞬間、エマの前のモニターが点灯する。
「こちら、アポロリー…、?」
「え、あ、はい!こちら、デルタ1!」
 画面にその顔が映り、少し慌てるしぐさを見せながら、エマが口を開いた。
「あれ、エマさん、どうしました?」
 不意に画面が割れて、ブルースの顔が映る。
「なんだ、なんだ?どうした?」
 野次馬的にエディも映し出された。
「え、いえ!なんでもありません!!」
 三者三様の表情でエマの慌てふためく様を見ていたが、軽く互いを見合わせるようにしてから、「こちら、アポロ小隊、任務完了。これより、帰艦します」と、告げられた。
「はい、こちらデルタ1、お疲れ様です。アポロ小隊の着艦しだい、マクロス発進します。急いで帰艦してください」
 少しばかり、眉を寄せながらも、3人は「了解」とだけ言って、モニターが切れる。
「はあ…」モニターが点灯しない事を勘ぐりながらも、エマは大きく溜め息を吐いて、席に深く座りなおす。
 そして、声を殺しながらも楽しげに笑うその通信士を唇を尖らせながら、横目で睨んでみせた。
 もちろん、そんな事をすれば、…どう変わる訳でもないと知りながらも…、それでも、そうしてやりたい気持ちになっていた。

 −−−−−−

 火星。軍神の星という側面と共に、農耕の星とも言われている。
 この火星の戦いは、俺に…その豊潤な恵みを与えてくれたのかもしれない。
 俺は、去り行く火星をあのサロン越しに見つめていた。
 この火星で、俺は仲間という存在を認識した。
 それは、今まで独りで生きていたと感じていた俺を再認識させてくれた。
 守るべき人がいる。それで、俺は強くなれる。…人間として、強くなれる。…
 そう実感した。
 だから、俺はこうして火星に、別れを告げるために、…このサロンからその姿を見送った。

 もっとも…今回は、このサロンには二人の部下の姿はない。
 …なんとなく、この空間を楽しみたい…そんな気分だったからだ。

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