=第八章・第三部=

=[超時空要塞MACROSS/地球、そして…]=

 

 摩擦音の轟音が途切れる…。自動判断でキャノピーを覆う防護幕が開いていく。
 そして、その一番に目に入ったのは、…クレーターまみれの大地、それによって巻き上がった土で染まる海…予測された光景が目に広がる。
「…ちら、デルタ…。…ち…、ルタ1。アポロリーダー、聞こえますか」
 ザラツキのある通信が届き、次第にクリアーになると、エマの声が耳に響く。
「ああ…聞こえてる…」目の前の光景に自失をしながら…上の空に通信を聞く。
「カメラは良好かい?…地球の風景が、見えてるか?」
「…はい、視認しました…」
 俺の言葉に…エマも喉奥に詰まらせた言葉を漏らす。
 あの憧れた…青く澄んだ空もなかった。遠方が見えないほどではないが…未だ収まらない土煙で汚れているように…空も赤茶けていた。
 失意…。それが心を襲った…。俺達が望んだ地球はこんなものじゃなかった…。強烈な失意が…俺の心を襲った。
「…アポロリーダー、…よろしいですか…」
「あ、…ああ、すまない。任務だったな…ポイントを指示してくれ」
 呆然とする俺の耳にエマの声が響く。…色を失うように気落ちする心に、…その声が響く。
「向かってほしいポイントは、進路三時の方向、102キロ地点です。地球到達目前に地球より傍受したフォールド通信があり、逆探知によるとその地点より発信されていた模様です」
「…そこは、大海のど真中だが…」エマの指示に俺は、首を捻り、それから鼻で笑った。
「…また、奴らの罠か…な」
「そうかもしれませんが…私個人の考えでは、それはないと思います」
「ほう?根拠は?」
「…カン、じゃ駄目ですか?」
「カン?ク、クク、…」エマの口から「カン」という単語が出てくるとは思わなかった。
「俺やエディみたいなのが言えば、様になる単語だぜ?オペレーター様の口のする単語じゃねえな」
「…ぶう」
 俺の言葉が癪に障ったのか、頬を膨らましてみせるエマの顔がモニターに映る。
「女性のカンを侮ると痛い目をみますよ」
「それは痴情のもつれだけにしてくれよ。頼むから。…クク、アポロリーダー、ポイントに向かう」
「デルタ1、了解。マクロスも後十数分で大気圏内に入ります」
 その通信を最後にモニターが消える。俺はしばらく、その消えたモニターを見つめ、指をかざす。
「…ククク、クッ」
 なんで、エマがいきなりあんな事を言い出したのか、理解はできなかった。が、心を覆うのものが失意ばかりではなくなっていたのが、笑えた。
 苦笑が漏れながらも、ラダーを切る。まだ土色に染まる空を裂き、俺の操作するヴァルキリーが飛ぶ。
 クレーターという墓標を刻んだ地表に弔いの念を込め…主翼を水平にし、…自らの機体を十字架に見立てるつもりで…

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