=第八章・第八部= =[超時空要塞MACROSS/地球、そして…]= |
滅びたはずの地球に降り立ち、初めてのエマージェンシーコールが鳴り響く中、足早にデッキに向かう。 「よお、」 ヘルメットを小脇に抱えながら、目の前を走る輝に声をかけた。 「いくぞ」 「ああ」 輝も俺に気づいたようで、速度を落とし、拳を上げる。 「死ぬなよ」 「死神が死んだら、世も末さ」 輝の言葉に冗談を返しながら、その拳に拳を軽くぶつけ、笑ってみせた。 「アポロ2、3、準備はいいか!!」 ヴァルキリーに乗り込み、インカムのスイッチを入れる。 「アポロ2、準備完了!!」 「アポロ3、いつでも大丈夫です!!」 モニターを通じ、二人の返事を聞く。 「アポロリーダー、発進チェック完了。アポロ小隊、出撃スタンバイ!!」 モニターを切り替え、点検事項をこなし、管制塔に指示を仰ぐ。 「デルタ1よりアポロ小隊各位へ、出撃許可。ポイントはB3です!!今回の敵は、今までのゼントラーディとは違います!!注意してください!!」 エマも少し慌しげに手元のキーを操作しながら、指示を出す。 「アポロ小隊、出撃!!久々の重力圏での戦闘だ!!2、3、気を抜くな!!」 ヴァルキリーの足場が動き、発射ステージへと向かう。 「…メルトランディ…という奴か…」 せり上がるエレベーターの中、俺は、メルトランディという単語を口にした。 ゼントラーディとメルトランディ、…それはどちらも巨人族をしめす単語であり、…輝と未沙の持ち帰った情報の一つである。 同じ巨人族ではあるが、ゼントラーディは男性のみ、メルトランディは女性のみの軍隊であり、その両軍は気の遠くなるほどの間、互いを憎み、戦争をしてきた。…しかるに、このマクロスはゼントラーディ軍の襲来で罠が発動をしたのだから、メルトランディの砲撃艦という事なのだろうか? 男と女が別れて戦争を始めるなど、馬鹿げた事もないが、それを成しえたのは彼らの持つ技術の一つ、クローニングシステムであろう。 男だけが男を生み出せ、女だけが女を生み出せるようになった時、種族生存の意義のための営みは皆無に等しい。… そして、男と女が互いを必要としなくなれば、当然…争いが起きるのではないか。…いや、その結末が二つの巨人族であろう。 しかし、この戦争に疑問を持った男と女が、この地球に降り立ち、巨人達の眼を盗むように生活を始め、…地球人も生み出した。 何の事はない。俺達もゼントラーディも、今攻撃に来ているメルトランディも、全て同じなのだ。 ただ、俺達のような(相手が巨人族なので相対的な呼び方ではあるが)小人族は、少々遺伝子配列が違うらしく、巨人達の持つメカニカル装置での培養は難しいらしいが、…。まあ、そこはどうでもいい。 この両軍の戦争は、世にもくだらない理由で始まったのかもしれない。…、もしくは根本的な決別が理由で始まったのかもしれない。 その原因は、分からないが…長すぎる戦闘が、その意義も失い、ただただ戦い続ける事にもなっているかもしれない。 ようは、男と女の痴情のもつれでの喧嘩が、…戦争になったのではないか。 そう思うと、これほどくだらないことに巻き込まれ、地球を死滅させられたと思うと、やるせない気分にもなる。… 「デルタ1より各機へ」エレベーターが上がりきると同時に、管制塔から早瀬の連絡が聞こえる。 「12時方向に敵旗艦を確認、相手は女ばかりのメルトランディのものと推測される」 「女ばかりですか。なんか、いいですね」 その連絡にアポロ3のエディがとんでもないことを口走った。 「デレッとして、手を休めるなよ。アポロ3。尻を掘られてもいいならだがな」 エディを一喝しつつ、カタパルトに着く。 瞬間、先方で飛ぶ部隊から、破壊音が響いた。 「何!!」視認できない範囲からの射撃によるものか、あの船旅をこなしたはずの一つの機体が…黒煙となり、海から上がる。 「…2、3、女だからと手を抜くなよ…、あの黒煙の一つになりたくないならばな…」 未だ燻る黒煙を見つめ、唇をかみ、スロットルを引いた。 「アポロリーダー、発進!!」 「2、発進」「3、発進!!」 盛り上がったバックファイア用の防護壁にアフターバーナーを浴びせ、滑走をし、…戦いの炎が舞い踊る世界へと、俺は踏み入れた。 それを心の奥で…死神が笑う。 「…」 今は答える気はない…。もちろん、それに死神が答える事もない。…ただ、それでも…死神はほくそえみ…心の中でうごめいていた。 振り切るように、スロットルを開く。もう、お前に頼らないと…俺は決めたから… |