=第九章・第五部=

=[超時空要塞MACROSS/ボドル基幹艦隊]=

 

 俺は眼前のゼントラーディ戦艦にターゲットを定める。その周りには、味方の信号も存在しない。
 二本目の封印キーを解除し、戦艦の中腹に鈍く動くターゲットを待った。
 長く感じる数秒後のロック音に、スイッチを入れる。右水平翼が戦慄き、一発の反応兵器という名前のミサイルが飛ぶ。
 一発目で経験した予想以上の衝撃を回避すべく、大きく上へ旋回をした。
 その数秒後、微生物のようなミサイルが接触したのだろう…
 戦艦の中央が強烈な光の玉が広がると、数秒経たずに光によってかき消され、…残った部分が連動するように炸裂する。
「アポロリーダーよりデルタ1へ、進路障害物を排除。航行可能だ」
「デルタ1、了解。引き続き、戦線を先行してください」
 手短にエマは通信を行い、モニターが切れる。全部体の出撃によるオペレーターのフル動員により、エマもまた、数個の小隊の支持に回っているようだ。
「了解…」消えたモニターに、そう小さく呟き、俺は前を見据える中、…その頭にフォッカーの顔が浮かぶ。

「俺は、…あきらめてないですよ。少佐」

 その呟きに、フォッカーはその粋だといわんばかりの笑顔を返し、消えた。

「こちら、アポロ2、隊長…」不意にブルースからの通信が届く。
「すいません、…それでも、あいつだけは落としてみせます」
 ただ、その一言でもって、…通信が切れた。
「…!」右手最奥にあったメルトランディ砲撃艦に強烈な閃光が起こり、掻き消え、…アポロ2への通信回路が遮断された。
「ブルース…」
「おい、ブルース、待てよ!!返事しやがれぇえええ!!」
 俺が少し空ろさを覚えるよりも先に、エディの絶叫が耳を打つ。
「うおおおおおおおおお!!」
「待て、アポロ3!!落ち着け!!落ち着くんだ!!エディ!!」絶叫が悲劇を生む。絶望は悲劇を呼ぶ。死神がほくそえむ瞬間が訪れる。
「エディ!!」

  …今度は前方に…強烈な閃光が巻き起こる。

 2機に搭載された反応兵器が彼らの撃墜に巻き込まれ、破裂した誘爆光が…俺の眼に焼きついた。

  −サア、ツギハ ナニガ…オチルカナ

 俺の奥で死神が笑う。…ただ、死神が笑う。それでも俺は、…唇を破るほどに噛み、…気を持たせる。
「それでも、…俺はあきらめない…。あきらめてなるものか!!」
 死神の誘惑を振り払い、俺はスロットルを引く。
 背後についていた二機のメルトランディ兵をファイターからバトロイドの変形による急速減速で後尾に入れ替わり、ガンポッドで打ち抜き、撃墜光景を待たぬまま、その場をファイターで飛び去った。
「俺は、お前を超える!!死神よ!!お前のほしがるマクロスをくれてやるわけにはいかない!!」

 絶望はしない。絶叫も抑えよう。失望などするものか。
 たとえ、マクロスを守るのが俺一人になろうとも…
 俺は、あきらめるつもりはない!!

 俺は、操作幹をグローブが破れるほどに握り締め、…スロットルを開いた。
 噛み締める口に…血のぬめりを覚えながらも、…吹き出そうな涙を押さえつけ、…心で吼え…

 底知れぬ海のような戦場へ飛び立とうとした。

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