=第九章・第八部=

=[超時空要塞MACROSS/ボドル基幹艦隊]=

 

 それでも、歌の届かぬ艦隊からの攻撃が続く。繰り出されるミサイルの雨と遠距離の砲撃が、傷つきながらも飛ぶマクロスを襲う。
 守るためにマクロスの艦上に立つデストロイドを焼き、進行する光線がマクロスの内部を貫き、…損傷を与える。

 攻撃で蠕動するマクロスの中で、ただ前を見据え、ミンメイは歌った。
 皆に託された思いを胸に…これが自分の使命とばかりに…彼女は歌った。

「艦長、前方の砲撃艦に熱源!!」
 ヴァネッサの警告と共に、前方モニターに放電を開始した戦艦が映しだされた。
「…」
 ただ、運命を見据え、グローバルは唇を閉ざす。この艦にはもう、バリアーを発生させるほどの力がないのだから…

  そのマクロスを狙う戦艦の中腹に閃光が突き刺さる。

 反応兵器による閃光ではない。他方向からの強烈な砲撃によるものだった。
「…」
 突如、モニターが強制接続により切り替わり、一人の巨人が映し出された。
「我々はボドル旗艦所属ブリタイ艦隊」映し出される巨人の顔に、管制室にいる皆が固唾を飲み、言葉を待った。

「これより、貴艦を援護する」

「援護…」あまりに衝撃的な事にグローバルは言葉振るわせた。
 未沙もまた驚き、周囲を見る。オペレーター全てが…そして、ミンメイもまた、面を上げた。
「プロトカルチャーの文化を失うわけには参りません」
 参謀となる巨人もまた、それに同意する言葉をこぼすと、ブリタイと名乗った巨人が拳を上げた。
「リン・ミンメイの歌を聞く全ての者に告げる」それは攻撃の手を止め、ミンメイの歌に聞き入っていた兵士達にも告げられる。
「我々の敵はただ一人。ゴル・ボドルザーを倒し、再び文化を取り戻すのだ」

 一人の少女が、巨人達の内に秘めたる心を揺り動かした。
 たった、一つの歌が、巨人達の闘争心を収め、その歌を愛し、心を痛めた。

 そして、彼女が再び歌を奏でだした時、…マクロスの周りには、守るように、巨人達の船が寄り添い、空を舞っていたのだった。

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