=第十章・第三部=

=[超時空要塞MACROSS/ゴル・ボドルザー]=

 

「メインターゲット、A−133、Z−165」
 早瀬中尉の送信にて、ターゲットの位置情報が届く。
 すこし先行をする輝の機体を追い、メインターゲットへの通路を飛行する俺達の前に、自動防衛システムが作動する。
 降り注ぐ光線を掻い潜り、しまりだすゲートをミサイルで破壊し、時にはすり抜け、目標を目指す。
「…」
 心の奥で死神がうずく。…うずく。…ウズク。
 既にマクロスからの通信が届かない。エマの声が届かない。…だから、死神が微笑んでいるのだろう。

  …サア、テヲ サシダセ ヨ

「…」前を見据え、操縦に専念しつつ、死神を無視する。

  …ドウシタ、サイゴノ ヨカンハ ツタエタダロウ?

「…」近づく息苦しさに胸を押さえそうになるも、…押しとめて、前を見つめる。

  …ラクニ ナリタイダロウ…

「死神よ」近づくターゲット区域を見据え、俺は口を開いた。
「俺は、もう…お前の力を借りない。見据えるべきものを見つけたからな…」

  …

「つまらない人生も終わりだ…終わりにしよう…、死神よ」

  …ソレガ コタエナラバ イイダロウ

 死神が微笑む。

  …ジゴクノ モンハ カイジョウシテオク ヨ フルキアイボウ ヨ

「いつか、死んだ時に、お前をその門に叩き込んでやるよ」
 俺はそう返すが、…もう、死神の言葉はなかった。

 先行する輝の機体がガウォークになり、最終障壁へミサイルを撃ち込んだ。
 強烈に爆発を起こす壁に向け、輝のヴァルキリーの脇を抜け、俺が飛ぶ。

 死神の伝えた最後の通達より、輝を守るべく、俺はボドルザー居住区へと一歩先に踏み入れた。

「ヤック!」
 ただ広い空間の中央に幾本もの触手を天井へと繋ぐ、ガラスケースのような物体に入ったひときわ大きい巨人の頭…ボドルザーが叫ぶ。
 その眼前にはフォログラフィのスクリーンが浮かび、ミンメイの姿が映し出されていた。
「ターゲット捕捉!アタック!」
 俺は友軍機となる輝へそう通達し、ガンポッドの引き金を引いた。
 ファイターの下に吊るされるガンポッドがうなり、その砲口から無数の弾丸を打ち出し、空薬莢が無重力空間へ流れ落ちる。
 確実に捉えた弾道が、ボドルザーの額を目指し、飛ぶ。が、…
「なに!!」「…ふん」
 後ろより来た輝が眼を向き、言葉を漏らすのが耳に入る。
 弾丸は全て、ケースに当たり、軌道が反れ、後部へと飛びうせる。
「さすがに、防備万全か…楽勝ってわけには行かないようだな…」
 ファイターで旋回しつつ、…俺はボドルザーを凝視した。
 そして、答えるようにボドルザーは…不適に笑い…、その周囲の装備を展開した。

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