=第十章・第八部= =[超時空要塞MACROSS/ゴル・ボドルザー]= |
「…」人類の存亡をかけて戦い、勝利をしたマクロス、その管制室、サブオペレーターフロアの中…。 「…」砂嵐の起こるモニターを見つめ、…一つの通信ボタンを押し続ける女性がいた。 「…う、…」機体の存在を示すコンソールランプは消灯したままだった。 「…、ア…」自分のまかされていたアポロ小隊の全滅は、あまりに過酷な現実であった。 「…アポロ…リーダー、」彼女はインカムを指で動かし、口元へ押し付ける。 「応答…応…答…して…」チャンネルを合わせても、聞こえるのは、通信不能を示す雑音ばかりだった。 「…くだ…い、…あ、…ア…」 突きつけられる現実は、勝利ばかりではない。 軍人であれば、当然起こりうる現実。 その覚悟もあった。それは、彼とも語った事実だ。 「…」歓声冷めやまらぬ中、モニターを見つめる彼女…エマへ、同僚は、声もなく見守った。 「…」かける言葉は見つからない。かけれる慰めも見つからない。 「…」ただ、憔悴する彼女を見守るしかなかった。 彼女が思い出すのは、…ぶっきらぼうに笑う彼の顔だった。 はじめてあった時に見せた、暗い笑みを浮かべる彼ではない。 二度目にあったそっけない笑顔でもない。 やっと、…自分を見つめてくれた笑顔だった。 「…もしも」言っておけばよかったと思う後悔 「………」言わなかったから、今の苦しみだけですんだと思う思念 「…もしも」…でも、後悔がついてくる。 エディはエマを上げるように、おべんちゃらを使い、楽しませてくれた。 ブルースは暴走しそうなエディをたしなめて、そして紳士的に付き合ってくれた。 …彼だけは、遠くから見ていたけど…疲れて腰を下ろした時には、無言で、ただ傍にいてくれた。 その…彼らはもういない。 −「オペレーター様が、一介の兵士に挨拶に来るものじゃないですよ」 「そんなことないです」 −「俺達の顔を…そんなに知らない方が、もっと扱いやすいだろう」 「ちがう、ちがう…」 知らなければよかった…そう、…知らなければよかった…と願う自分が、ほんの少しでもいる事に、…嫌悪した。 映らないモニターを見て、過去と彼と話した言葉を思い出し、ただ涙が溢れた。 「…」もしもを信じて、…エマはただ待った。 「…」待つことが…彼女に出来ることだから… 「…」…終わるにはまだ早いと、あきらめるのは早いと思っているから… |