=第十章・第十一部=

=[超時空要塞MACROSS/ゴル・ボドルザー]=

 

「…」死神との会話から、…そして、重苦しい黒から、白い切れ間が見れる。
「………」
 喉を震わせ、喋ろうとするものの、…痛みが走り、…声は出なかった。
「おお、気づいたか」
 その耳に、男の声が入る。…動きづらい首を少しだけ動かし、視線を向ける。
 見慣れた男の顔、…そう医務室の主治医…
「ここは…地獄のようだな…汚い顔が見える」
「…」俺が振り絞り、そう語ると、男が笑った。
「わはは、お前のその言葉が出るという事は、脳みそも無事そうだな。アポロリーダー」
 いつもならば、頭なり肩なりを叩いてみたりするそいつが、それをする事無く、俺を見た。
「思わしくはないぞ…。両足は粉砕骨折。両腕も筋肉が寸断寸前だった。内臓もかろうじて損傷は軽微という所か。まあ、なんだろうね…死神ってのが救ってくれたんじゃねえか」
「死神…」その単語に俺は、口元をゆがめる。
「お代だって言ってたな…そういや…」
「まあ、なんだな…」俺の言葉をよそに男はカルテらしい紙を捲りながら、言葉を続けていく。
「だいぶの間は安静だな。腕はともかく、脚に関しては巨人族より手に入れたクローン再生でもしないと無理だからな、…培養を考えて、一ヶ月は横になってろ。それからリハビリだ」
「おいおい、一ヶ月…かよ…辛気くせえな…」
「黙ってろ、…死にそびれたんだ。それくらい、覚悟しとけってんだ」
 俺が男の説明に悪態をつくと、男は口元をゆがめ、笑った。
「とりあえず、今日一日は確実に横になっとけ。固定はしとくが、動くなよ。腕が転がってもしらんからな」
「…おい、…なんだ。そりゃ…」
 何か言おうと思い、口に出そうとした時、「また後でな」と、ドアが閉められる。
「…」それを見つめ、俺は天井を見た。
「まあ、俺だけじゃないだろうしな…」
 話し相手でもと、俺は思ったが…あの戦闘の後だ。俺以外にも、相手をしなければならない連中がいるのは明白だ。
「…」

 生きている自分が情けない気がした。
 死神のお目こぼしで生きていることが情けない気がした。
 そして、部下を死なせ、おめおめと生きる羽目になった事が…ただ、情けない気がした。
 そう、心の中で呟いても…死神は語りかけてこない。
 いや、その気配さえ、感じられない。

「またの戦争か…」白い天井を見つめ、俺は…いろいろと思い返す。
「…戦うだけの人生、続けろってか」それに苦笑をする俺がいた。
「昔、のなら…喜んだだろうな…俺も」変わった自分に嘲笑の笑いが漏れる。
 白い部屋の中、…それが小さく反響して、耳に入った。

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