=第十一章・第三部=

=[超時空要塞MACROSS/その先に…住まうもの]=

 


 …

「いきなりだな…おたく」ドアを開かれ、輝が苦笑を交えて、減らず口をたたく。
「立ち話もなんだから、さっさと入れよ」
 挨拶のひとつでもしようと思ったが、それよりも先に輝が家の中へと入っていく。
「すまないな…夜分にな…」俺も続いて、中に入り、家の中を見回した。
「お前にしては、こざっぱりしてるな…」
 キッチンとベッドと自分の食器、そして机一つという俺ほどではないが、衣装ダンス等の生活必需品が並び、綺麗に掃除がされているのか、埃っぽさを感じなかった。
「家を空けることも多いだろうに…、なんか秘訣でもあるのか?」
「…いや、ちょっとね…」
「ああ、中尉…いや、今は大尉だったな…なるほど」
「べ、別に頼んでるわけじゃないぞ」
「ま、いいさ…」
 輝のあわてぶりを横目に俺は椅子に座り、机に手に持ったものを机に置いた。
「コーヒーでいいかい?しゃれたものじゃ、紅茶もあるよ」
「いや、コーヒーでいい。ああ、合成のまずいやつでもかまわないぜ…メーカー使わなくてもな」
 そして、キッチンでコーヒーメーカーを動かす輝の姿に静止を入れる。
「はは、悪いけど、これしかもってないよ」
「味にこだわってるってか?」
「そうでもないさ…なじみの品ってだけさ…」
 そう言われて、よく見れば、少し古めかしさも感じた…。それに何かしらの思い出があるのだろう、…そう感じたが、とりたてて聞く項目でもないので、俺は話題を変える。
「新型の方はどうなんだ?」
「ああ、今までのヤツよりパワーが凄いね。でも、もっぱら宇宙空間での活動だから、たまに地球が恋しさも感じるね」
「やっぱり、地上が一番か。お前も…」
 コーヒーメーカーが沸いたのだろう。二つのカップを持って、一つを俺の前に置き、向かいにと腰を下ろす輝。
「それで、いきなり何の用?急ぎにも聞こえなかったけど、おたく…沈んでたようだが」
「…ん」輝が、今日俺が訪れた理由への問いに、口元をゆがめてみせる。
「前に言ったよな…プラモをやるってな…。完成したから持ってきたのさ」
「は?」
 輝が少し驚いた表情を見せる中、持ち込んだ袋を解いて、中にしまっていたVF-1ヴァルキリーの模型を取り出す。
「俺の誓いも終わった。…だから、このマクロスシティにこいつを置いておきたい…一条、それを君に託していきたい」
「どういう事だよ…」
「分からない奴だな。俺は軍を辞めるって言ってんだよ」
「…」
 俺の言葉が意外すぎたのか…、その眼をむいて見返す輝の表情は、あまりに滑稽で面白かった。

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