=第十一章・第四部=

=[超時空要塞MACROSS/その先に…住まうもの]=

 

「なんで、辞めるのさ?…もう怪我もよくなってんだろ?おたくの実力なら、すぐに取り返せるだろう」
「…空に憧れた理由は、お前とは違う。死ぬことを目的に飛んでいた。…そして、今、俺は自ら死ぬことをやめた…。動機がなければ、空を飛ぶ必要はない。別に、…役職や立場もいらない…。後は、…今までの償いをして、生きていくことだと、俺は思っている」
 輝の家の窓から、マクロスが望める。…一年の修復を持って、見た目からは主砲軸の修復も済んだようだ。あの勇壮なる姿を月影にて映し出している。
「マクロスを守ることが、そのヴァルキリーに託した思いだ。それも今は、窮するほどの必要性でもない。だから、今、一条、お前にそれを託したい」
「…託したいって、そんな身勝手な…」
「分かってる、身勝手だってのもな…、ただ、お前だけしか、この思いを預けれない。俺はそう思っている」
「俺も軍に残ってないかもしれないぜ」
「…それは、君の自由だよ。…ゴミ箱に捨てるなり、何なり…自由にどうぞ」
「たく、おたく、…そういう所は変わらないね」
 輝が笑い、机に俺の手渡したヴァルキリーを置く。
「それで、軍を辞めて、どうするんだい?」
「旅に出ようと思う」筋トレはしているものの、未だ細さを覚える腕を見つめながら、俺は呟く。
「地球大気浄化計画の市民ボランティアがキャラバンを組んで行うらしい。…それにのって、地球を回り、…今まで殺してきた者への追悼でもしてこようと思う」
「大気浄化計画なら、別に…」「軍部でやってることとは違う」
 輝が言おうとした事を遮るように、俺は口を挟んだ。
「分かってるよ。…でも、俺は地上で暮らしていくことを決めた。ヴァルキリーで飛び散布する方が確かに早いさ…軍の技術を使えば、成長もいいだろうさ…。でも、…が、付きまとうんだよ」
「…」
「納得の生き様でもって、生きていく事に、俺は決めたんだ。そのために、軍を辞めて、…旅に出ようと思う」
「それでいいのか?おたくは…」
 輝は、俺の話に耳を傾け、最後に問いただす。
「…どうせ、俺が知る者もこのマクロスシティには少ない。別に俺がいなくなっても、問題はないだろう?…良い機会だとも思う…」
「…そうか、」
 輝は喉になにかを引っ掛けたように言いかけ、頭をたらし、是正を呟く。
 彼が何が言いたかったかは、なんとなくは分かる。数少ない知り合いの中に、エマもいる…。
 彼女には告げずに出ようと思ったからだ。
「まあ、あの時も生きてたんだ。ボドルザーの攻撃をゴキブリ叩きに喩えて、その攻撃からゴキブリのように生き残ってるしな…」
「ひでぇな…それ」
「…旅先でたまに見かけるヴァルキリーにでも、手紙を添えてくれよ…おたくの活躍をここから応援するよ」
 輝の言葉に、俺は…苦笑いを浮かべる。
「見えたら、紙飛行機にでもして投げてやるさ。植物の種を添えてな…」

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