=第十一章・第五部=

=[超時空要塞MACROSS/その先に…住まうもの]=

 


 …

 善は急げ…というわけではないが、キャラバン隊の出発も間近でもあった。
 今や、グローバル提督に続き、マクロス運営の最高指揮官でもある早瀬未沙に、俺は辞表を提示した。
 もちろん、その答えに彼女は渋りを見せる。撃墜されたとしても、俺もボドルザーを倒した者の一人。輝と共に、看板スターというわけではないが、新参者を率いてほしいという願いもあったのだろう。
 長期休暇という形も提案されたが、…エマとの繋がりを絶つこと…、それもあったから、俺は首を横に振る。
 提督にも謁見し、…辞表が受理される。
 そして、軍を後にする時、…高くそびえるマクロスを見つめる。
 悠然に伸びる二本の主砲塔が空の雲にかかるかのようにも見えた。
「また、会おう…死に際にでもな…」
 護ってきたものへ、俺はそう告げて、マクロスに背を向けた。

 キャラバン隊の出立までの日数も差し迫っていたものの、特に用意するものもないので、遠出の装備を買い揃えるだけですむ。
 家の引継ぎも終わり、旅立ってからの一週間後、新婚になる若いカップルが住むことも決まった。
 元々から、何もない家だったので、…新築ですか?等といわれたのに、苦笑も漏れたが、…
 残すべき、大切なものも輝に託したのだ。この家にも未練はない。

 そして、当日の朝…。俺は、住居を後にするため、ドアを開けた。

 これで綺麗さっぱり、…俺は、持つ全てを失ったのだ。

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